あせらず、りきまず阿呆連 締太鼓 四十七年の打ち手にきく、続けていく極意

徳島の夏は、蒸し暑い。その蒸し暑さの中、八月の本番に向けて六月から毎晩、練習を続けている連がある。阿呆連だ。
数年、この連を見てきた。そのうちに、ひとつの問いがよぎった。連とは、なにでできているのか。
その答えを出すために、連をひとつずつ分解して、そこにいる一人ひとりに目を向けていく。そのひとは、なにでできているのか、と問いながら、ここにあるもの、の本質を解いていく。
今回の一人は、締太鼓の打ち手だ。阿波おどりの鳴り物で、締太鼓は大太鼓とともにリズムを刻む。阿呆連のリズムにある独特の“間”を、この人は長く打ち続けてきた。その打ち方を、連の内外から参考にする人が多いという。
阿呆連とは
阿呆連は、徳島市の阿波おどり振興協会に所属する有名連のひとつ。一九四八年に結成された、低く前傾して豪快に舞う「阿呆調」の本家だ。
右肩の破れ傘を目印に、いまは約百四十名で踊り継いでいる。
阿呆連の顔ぶれ
連は、男踊り、女踊り、そして囃子を担う鳴り物でできている。その一角を一役ずつ取り出し、十数名に話を聞いていく。
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副連長次の世代を、育てる→ 読む
鉦全体のテンポをとる→ 読む
笛澄んだ音で主旋律を→ 読む
団子・松大勢でひとつの形に→ 読む
三味線旋律に厚みを重ねる→ 読む
大太鼓低音で土台をつくる→ 読む
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男踊り低く、豪快に舞う近日公開
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締太鼓とは ― 軽快な高音で、拍を刻む

締太鼓は、くり抜いた胴の両面に牛革を張り、縄やボルト、ターンバックルで強く締め上げた和太鼓だ。皮を鋲で留める長胴太鼓(宮太鼓)と違って、締め具合で音程を変えられるのが大きな特徴で、甲高く歯切れのよい高音が出る。撥で打ち、祭囃子や能・歌舞伎・長唄などの囃子で、拍を刻む役割を広く担う。
阿波おどりの鳴り物では、締太鼓は軽快なリズムを刻んで、踊り手を弾ませる役割を担う。低い拍を支える大太鼓、テンポをとる鉦、旋律を奏でる笛や三味線――そのなかで締太鼓は、細かい手数で、踊りに乗りとアクセントをつける。
本人に、聞く
間を追求して数十年
いま、何年目になりますか?
踊り子を十五年ぐらいやりながら、その後半で、鳴り物も覚えていってね。それで、今に至るという感じ。全部で四十七年になるかな。
締太鼓だけで数えると、年数はまた違ってきますよね?
締太鼓だけで数えたら、かじり始めから入れて、三十四、五年にはなってくるかな。
締太鼓のリズムってどんな特徴がありますか?
「間」があることかな。ふつうはドンがドン、ドドンがドン。うちは「間」があるけん、「ン」のとこに余韻がある感じ。それが「間」が入っているということ。
桟敷では、見せ場をつくる
打ち方を見てると、その間にあたる部分で腕を振り上げているところを見ますが、動作から間を作っている、ということでしょうか……
あれは「ポーズ」もあるからな(照)。やっぱり桟敷に入って、ずっとトコトコトコだけでやっててもお客さんに喜んでもらえんやん。だから、トトンがトン、のときに腕を振り上げて、オーバーアクションをつける。

引く側に、なって
数十年単位で同じ連にいて、同じ楽器をやり続けるなかで、なにか変わっていくものはありましたか?
やっぱり、みんなを引っ張っていかないかん立場でやるのと、今はもう譲って、一歩引いてやるのとでは、見える世界もちごてくるからね。またそれも、楽しさのひとつ。
いつまでも、勉強
見え方が変わったというのは、これまで長くやられてきて、ご自身が成長した、と感じているからでしょうか?
成長というのは、何年やってても実感はしてませんね。指導していただいた方には、「できてる」ってなかなか言うてもらえへんできたからね。僕の叩き方が好きじゃって言うてくれる人がおって、「おっ、自分も成長しよんやな」ってふと感じる瞬間はある。でも自分では、実感してない。いつまでも、勉強ですよ……
連内外に、叩き方を参考にされている方がいるのを見聞きしているのですが、そういった方々へのメッセージをひとこと。
焦らず、力まず、落ち着いて楽しんでください。わからんことがあったら、いつでも聞いてください。
このひとは、なにでできてるか

この人が連に打ち込んでいるのは、そのわずかな“間”だ。その一瞬のタメが、踊り子の足を弾ませ、桟敷の空気を軽くする。
四十年あまり打ってなお、「まだ勉強です」と言う。引っ張る側から、一歩引く側へ。それでも締太鼓に向き合い続けるこのひとは、――あせらず、りきまず、でできている。







