一言で言うなら、信頼感阿呆連 笛 十四年目の吹き手にきく、信頼へ続く道

徳島の夏は、蒸し暑い。その蒸し暑さの中、八月の本番に向けて六月から毎晩、練習を続けている連がある。阿呆連だ。
数年、この連を見てきた。そのうちに、ひとつの問いがよぎった。連とは、なにでできているのか。
その答えを出すために、連をひとつずつ分解して、そこにいる一人ひとりに目を向けていく。そのひとは、なにでできているのか、と問いながら、ここにあるもの、の本質を解いていく。
今回の一人は、笛の吹き手だ。太鼓や鉦がリズムを刻むなか、篠笛はただ一本、旋律を奏でる。その澄んだ音で場に華をのせながら、今も課題だらけだと言い、追いかける背中がある。
阿呆連とは
阿呆連は、徳島市の阿波おどり振興協会に所属する有名連のひとつ。一九四八年に結成された、低く前傾して豪快に舞う「阿呆調」の本家だ。
右肩の破れ傘を目印に、いまは約百四十名で踊り継いでいる。
阿呆連の顔ぶれ
連は、男踊り、女踊り、そして囃子を担う鳴り物でできている。その一角を一役ずつ取り出し、十数名に話を聞いていく。
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鉦全体のテンポをとる→ 読む
今回の記事笛澄んだ音で主旋律を
団子・松大勢でひとつの形に→ 読む
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笛とは ― 阿波おどりの主旋律

笛(篠笛)は、篠竹でつくられた日本の横笛だ。管に息を吹き込む歌口と、六つか七つの指孔を備える。澄んだ、高く伸びる音色を持ち、祭囃子や長唄、日本舞踊などで、打楽器と合わせて主旋律を奏でる。
阿波おどりの鳴り物では、篠笛が澄んだ音で主旋律を奏でる。鉦や太鼓、三味線と合わさって、阿波おどりの軽快な二拍子の囃子をつくる。
本人に、聞く
メロディーが、メイン
笛は、今で何年目になりますか? 笛の中での立ち位置も教えてください。
今は十四年目になりました。笛の中では、まだ最年少なんですけど、歴は長いんです。歴でいうと、笛の中で六か七番目ぐらいですかね。始めたのが早かったんで。ずっと笛で、最初から阿呆連にいます。
阿呆連の中で、笛ってどんな役割の鳴り物だと思われますか?
笛は、メロディーを担う鳴り物なんです。演奏の芯になるのは大太鼓だと思われがちですけど、メロディーを引っ張る笛も、それと同じくらい芯になっているのかな、と思ってます。
同じ音を、出すのが難しい
笛をやっていて、いま難しいなと感じるのは、どのあたりでしょう?
いくら「六本調子」と言っても、誰が吹いても同じ音、というわけじゃないんですよね。だから、正確な音・音程を出すのに、今すごく苦労してます。
続けてくるなかで、葛藤するポイントも変わってきたんじゃないですか?
最初は、唯一「息を使う」楽器なので、音の出し方とかね。高い音が全然出なかったり、というのが初期で。次に、指を覚えたり、阿呆連独自の奴の音、団子の音を覚えていくのに苦労して。その次が――これはずっとなんですけど――音色が三味線と合ってるか。今でも、変に上ずってないか、というのを悩みながら吹いてます。
課題だらけの、毎日
気持ちの面では、長く続けてきた今、どんな心境なんでしょう?
もう課題だらけで。こなして、「昨日こなせた」と思っても、次の日には「やっぱりこなせてなかった」ということしかない。それを潰していけるように頑張らないとダメだな、とすごく思ってます。
昔から、そんなに課題が見えてたんですか?
昔は正直、そんなに考えてなかったんです。始めたのが小学六年生で、その頃は「連についていけたら」という気持ちが先でした。でも、外の舞台に出ていく機会が増えてくると、「ついていくだけじゃダメだな」と感じて。今も、立場や状況が変わるたびに、課題はどんどん増えてます。
一生、背中を追いかける
課題がどんどん見えてくるのは、目指す地点があるからでしょうか? 目標にしている人はいますか?
私は一生、笛のリーダーの背中を追いかけていくんだと思います。音がかすれることもないし、笛も三味線も両方こなせる。あそこまで登り詰めたいけど、リーダーがずっと笛のこと、踊りのことを考え続けてきたからこその今なので、まだまだやな、と思います。そんなリーダーに見ているのは、技術と、そこからくる圧倒的な信頼感ですね。
将来像を一言で表すとしたら……何でしょう?
一言で言うなら、「信頼感」かな。「この人に任せたい」「この人に来てほしい」――そう思ってもらえるようになりたいですね。
一言で言うなら、「信頼感」かな
このひとは、なにでできてるか

笛は、鳴り物でただ一本、旋律を奏でる。場に華をのせる音だ。
それでもこのひとは、「課題だらけ」と言う。潰しても、次の日にはまた見えてくる。追い続ける背中がある。――このひとは、まだ潰しきれない課題、でできている。
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