郡上おどりの曲名は、意味の分からないものが並びます。「げんげんばらばら」「ヤッチク」「三百」。何のことか分からないまま踊っている人が多いはずです。
この記事は、10曲それぞれの成り立ちと名前の背景を、郡上市と観光協会の資料から整理します。なお歌詞そのものの転載はしません。意味と由来の話です。
3分で説明すると
- 郡上おどりは全10曲。10曲すべてが1996年に重要無形民俗文化財に指定された
- ★10曲は最初から10曲だったわけではない。追加と改称を経ていまの形
- 「春駒」はもと「さば」。1936年に追加、1949年に改称
- 「げんげんばらばら」も1936年の追加曲
- 「かわさき」は大正時代に「古調かわさき」から改変されたもの
- ★「まつさか」の歌詞は郡上名所案内。徹夜おどりは明け方のこの1曲で終わる
- 文献では1728年(享保13年)の『濃州志』に、いまの歌詞につながる歌がある
郡上おどりの曲は全10曲
曲名はこの10です。
かわさき/春駒/三百/ヤッチク/古調かわさき/げんげんばらばら/猫の子/さわぎ/甚句/まつさか
10曲すべてが重要無形民俗文化財
この10曲は1996年(平成8年)12月20日に重要無形民俗文化財に指定されています。それ以前の1955年(昭和30年)の八幡町指定は、「かわさき」を除く9曲でした。
つまり「かわさき」だけが別扱いだった時期があるということです。理由は次の章で書きます。
演奏は踊屋台の上です。音頭取りと囃子方が屋台に上がり、その周りを踊り手が輪になって踊ります。囃子方に太鼓・三味線・笛が揃ったのは1935年(昭和10年)頃と郡上市の資料は見ています。
10曲の成り立ち
年号が分かっているものから並べます。
| 曲 | 分かっていること |
|---|---|
| 古調かわさき | かわさきの原型。徹夜おどりは鳴り物なしのこの曲で始まる |
| かわさき | 1922年(大正11年)頃以降、大正時代に古調かわさきをもとに改変して振り付けられた |
| 春駒 | 1936年(昭和11年)に「さば」として追加 → 1949年(昭和24年)に改称 |
| げんげんばらばら | 1936年(昭和11年)に追加 |
| まつさか | 歌詞は郡上名所案内。徹夜おどりの締めの曲 |
| さわぎ | 観光協会は相撲甚句についても触れている |
| 三百/ヤッチク/猫の子/甚句 | 成立年についての記載は見つかっていない |
年号が分かっている4曲のうち3曲が大正以降です。400年の祭と言われますが、いまの10曲という形は昭和に整ったものだということになります。
「かわさき」の名前はどこから来たか
観光協会は起源の一説として、「天正年間に伊勢古市の川崎音頭が郡上にもたらされた」と書いています。伊勢の古市(いまの三重県伊勢市)で踊られていた川崎音頭が元だという説です。
ただし郡上市の資料は、郡上踊全体の起源について「発祥や由来には諸説あり、定かではない」としています。在郷の神社・寺院の祭礼、真宗の念仏踊り、風流踊り、伊勢踊り、盆踊り、各地の民謡などが習合して原型になったと考えられている、という書き方です。
確かなのは、いま踊られている「かわさき」は大正時代に古調かわさきから改変されたものだという点です。1955年の町指定で「かわさき」だけ外れていたのは、これが理由と考えられます。
「春駒」はもと「さば」だった
ここが10曲の中でいちばん動いた曲です。
郡上市の資料によると、1936年(昭和11年)に「さば」という名前で追加され、1949年(昭和24年)に「春駒」と改称されました。13年間は別の名前で踊られていたことになります。
「春駒」という言葉自体は、春に馬を使う農事や、正月の門付け芸を指すものとして各地にあります。ただし郡上おどりの「春駒」が何に由来して改称されたのかを説明した資料は見つかりませんでした。
分かっているのは改称の年(1949年)と、もとの名が「さば」だったことです。
「げんげんばらばら」とはどういう意味か
最も聞かれる曲名です。
「げんげんばらばら」の語の意味を説明した公式の記述は見つかりませんでした。 郡上八幡観光協会にも、郡上市の資料にも、語源の説明はありません。
資料で分かっているのは成立年だけです。1936年(昭和11年)に「さば」(のちの春駒)とともに追加された曲。この2曲が同じ年に加わっています。
つまりげんげんばらばらは、10曲の中で最も新しい部類の曲です。江戸から伝わった古い曲名ではなく、昭和に加えられたものだということは押さえておく価値があります。
語の意味を知りたい場合は、保存会か郡上八幡観光協会(0575-67-0002)に直接聞くのが確実です。
「まつさか」は郡上名所案内
10曲の中で、歌詞の内容が資料で説明されている唯一の曲です。
郡上市の資料は「歌詞は郡上名所案内として今も唄われている」としています。郡上の地名が歌詞に出てくるということです。
そしてこの曲は特別な扱いを受けています。徹夜おどりでは、音頭取りと囃子方が3交代で「まつさか」以外の9曲を回します。「まつさか」は回しに入りません。
明け方に「まつさか」を踊り、朝5時に朝の挨拶で終わる。 つまり終わりのためだけの曲です。
通常の夜でも最後に踊られます。「まつさかが始まったら今夜は終わり」という合図になっているということです。
歌と町のつながり
歌に出てくる郡上の地名
「まつさか」が郡上名所案内だということは、歌詞を知っていると町の見え方が変わるということでもあります。
郡上八幡の町なかには、おどりの会場になる場所が点在しています。2026年の日程で会場になったのは、旧庁舎記念館前・上殿町・積翠園前・城山公園・川原町・本町・下殿町・大手町・郡上八幡駅前・今町・新栄町・下日吉町・橋本町・新町・下愛宕町・立町・八幡神社・上桝形町です。
縁日の名前にも地名と由緒が入っています。八坂神社天王祭(上殿町)/大乗寺三十番神祭(本町)/洞泉寺弁天七夕祭(本町)/宗祇水神祭(本町)/桝形地蔵祭(上桝形町)。
郡上市の資料は郡上踊を「郡上八幡市街地の各町内の祭祀や由緒に由来し、町内ごとに日程と踊会場が決められている」と説明しています。歌も会場も、町の地理と結びついているということです。
→ 郡上おどり2027の日程|30夜のどの日に行くか・会場の移り方
生演奏の屋形(おどり屋台)で聞く
郡上おどりは録音を流しているのではありません。踊屋台の上で生演奏されています。
郡上市の資料によると、踊屋台は1925年(大正14年)に造られました。昭和初期に一度紛失し、その後1947年(昭和22年)、1953年(昭和28年)、1973年(昭和48年)に新調されています。
徹夜おどりでは、この屋台を旧八幡町役場前から通りの中央へ曳いて設置します。そして音頭取りと囃子方が3交代で朝まで演奏します。
深夜に人が減ると、音頭取りの声と下駄の音がよく通ります。曲を聞くという意味では、この時間帯がいちばんです。
歌の意味を知ると踊りが変わる
3つ変わります。
曲の順番に型がある
徹夜おどりは鳴り物なしの「古調かわさき」で始まり、明け方の「まつさか」で終わります。原型の曲で開け、名所案内の曲で閉める。行き当たりばったりではありません。
成立が300年違う曲が同じ夜に並ぶ
文献にある歌詞の原型は1728年。一方で「かわさき」は大正の改変、「春駒」と「げんげんばらばら」は昭和11年の追加です。同じ輪の中で、成立が300年離れた曲が続けて踊られます。
そして「まつさか」が聞こえたら今夜は終わりです。帰る時間の判断に使えます。
音源・動画はどこで聞けるか
公式が音源や動画を公開しているページは見つかりませんでした。
現地で聞く
確実なのは現地で聞くことです。7月中旬から9月上旬まで30夜あり、毎晩20時から生演奏されています。
おどり教室で聞く
もうひとつはおどり教室です。郡上八幡旧庁舎記念館が、郡上おどりの開催日の土曜・日曜・お盆に14:30/15:30/16:30の3回、定員65人で実施しています。講師は郡上おどり保存会で、曲目は日によって変わり、日替わりで10曲すべてを扱います。団体貸切にはお囃子の生演奏付きのプランもあります。
問い合わせは0575-67-1819です。
曲名と節を先に覚えておくと、輪に入ったときに「いまどの曲か」が分かります。音源があれば、徹夜おどりの開始の「古調かわさき」と締めの「まつさか」の違いも事前に聞けます。
よくある質問
Q. 郡上おどりの有名な曲名は何ですか
代表曲は「かわさき」です。全10曲は、かわさき・春駒・三百・ヤッチク・古調かわさき・げんげんばらばら・猫の子・さわぎ・甚句・まつさかです。
Q. げんげんばらばらとはどういう意味ですか
語の意味を説明した資料は見つかりませんでした。分かっているのは1936年(昭和11年)に追加された曲だということです。
Q. 春駒の歌詞の意味は何ですか
歌詞の意味を説明した資料は見つかりませんでした。この曲は1936年に「さば」として追加され、1949年に「春駒」と改称されています。
Q. 春駒の掛け声は何ですか
掛け声についての記載は見つかりませんでした。現地で輪に入ると、周りの声で分かります。
Q. 曲は何曲ありますか
10曲です。1996年12月20日に10曲すべてが重要無形民俗文化財に指定されています。
Q. 最後はどの曲ですか
「まつさか」です。徹夜おどりでは、この曲以外の9曲を3交代で回し、明け方に「まつさか」を踊って朝5時の挨拶で終わります。
Q. 郡上踊りが禁止されたのはなぜですか
1874年(明治7年)6月、岐阜県布達第119号で「悪習」として禁止されました。理由は老幼男女が群集する風儀上の問題です。翌年に解かれています。
まとめ|10曲の背景
- 全10曲。1996年12月20日に10曲すべてが重要無形民俗文化財
- ★いまの10曲は昭和に整った形。追加と改称を経ている
- かわさき|大正時代に古調かわさきから改変。1955年の町指定では唯一外れていた
- 春駒|1936年に「さば」として追加 → 1949年に改称
- げんげんばらばら|1936年に追加。語の意味を説明した資料はない
- ★まつさか|歌詞は郡上名所案内。9曲の回しに入らない締めの曲
- 演奏は踊屋台の上で生。屋台は1925年に造られ、3度新調されている
- 文献では1728年の『濃州志』にいまの歌詞につながる歌がある
曲の背景が分かると、30夜のどの日に行っても聞きどころが変わります。日程は7月中旬から9月上旬、徹夜おどりは8月13〜16日で固定です。
→ 郡上おどり2027の日程|30夜のどの日に行くか・会場の移り方
→ 郡上踊りの歴史|400年続く盆踊りが禁止された理由
→ 郡上八幡観光モデルコース|半日で回る城下町と白川郷への足
この記事の情報は2026年10月20日時点で、郡上八幡観光協会の「郡上おどり」「令和8年度(2026)郡上おどり日程」、郡上市「歴史的風致維持向上計画」第2章(郡上踊にみる歴史的風致)、郡上おどり教室(郡上八幡旧庁舎記念館)を確認したものです。曲の成立年と改称年は郡上市の資料によるものです。歌詞の本文は掲載していません。
