葵祭は下鴨神社(賀茂御祖神社)と上賀茂神社(賀茂別雷神社)の例祭です。行列は京都御所を出て、この2社を順に回ります。
なぜ2つの神社なのか。答えは神話にあります。下鴨神社の御祭神・玉依媛命が、上賀茂神社の御祭神・賀茂別雷大神を生んだと伝えられています。
3分で説明すると
- 行列は京都御所10:30 → 下鴨神社11:40着・14:20発 → 上賀茂神社15:30着
- 下鴨の玉依媛命が上賀茂の賀茂別雷大神を生んだ。賀茂建角身命はその外祖父
- 「下鴨」「上賀茂」は鴨川の下流・上流という呼び分け
- 両社で社頭の儀が行われる。勅使が御祭文を奏上し、東遊が奉納される
- 前儀は流鏑馬と歩射と御蔭祭が下鴨、足汰式と賀茂競馬が上賀茂。禊の儀だけ毎年交互
- 有料観覧席があるのは下鴨だけ(上賀茂にはない)
葵祭は3つの場所をつなぐ祭
路頭の儀(行列)は約8キロを進みます。通る順は決まっています。
| 場所 | 先頭の通過予定 | 何が行われるか |
|---|---|---|
| 京都御所 | 10:30 | 建礼門前から出発 |
| 下鴨神社 | 11:40 着/14:20 発 | 社頭の儀、走馬の儀 |
| 上賀茂神社 | 15:30 着 | 社頭の儀。終了予定18:00 |
下鴨神社で約2時間40分とどまります。ここで神事を行うためです。そのあと加茂街道(賀茂川堤)を北上して上賀茂神社へ向かいます。時刻の全体は 葵祭2027のルート にまとめました。
なぜこの順番なのか
先に書いておきます。この順番の理由を、両社も京都市観光協会も説明していません。 書かれているのは順路と時刻だけです。
ただし両社と観光協会の記述から読み取れることが2つあります。
鴨川の下流から上流へ
下鴨神社は社名の由来をこう説明しています。通称の「下鴨」は、鴨川(賀茂川)の下流に鎮座することに由来すると。上賀茂神社は上流です。
つまり行列は川に沿って南から北へ、下流から上流へ進んでいることになります。実際、下鴨から上賀茂への順路には賀茂川堤が入っています。
勅使は御所から出る
葵祭は勅祭です。下鴨神社は葵祭を「三勅祭」(賀茂祭・春日祭・石清水祭)の一つとしています。
行列の中心にいるのは近衛使代(勅使代)で、社頭の儀では勅使が御祭文を奏上して御幣物を奉納します。天皇の使いが御所から出て両社へ向かう、という構図です。
この2点を重ねると「御所から出て、川を下流から上流へ」という順になります。ただしこれは神社の説明ではなく、記述から読める筋です。
下鴨神社での社頭の儀
行列が11時40分に到着すると、社頭の儀が始まります。
中身は勅使が御祭文を奏上し、御幣物を奉納することです。あわせて御馬の牽き回しと、舞人による「東遊(あずまあそび)」の舞が奉納されます。
下鴨神社はさらに、社頭の儀のあとに糺の森の馬場で「走馬(そうめ)の儀」が行われるとしています。
行列が出発するのは14時20分です。到着と出発の2回、同じ場所で行列を見られるのはここだけです。参道には有料観覧席があります。
上賀茂神社での社頭の儀
行列は15時30分に到着します。上賀茂神社は祭儀の終了予定を午後6時としています。
場所は「二の鳥居」の内側です。勅使の御祭文奏上、牽馬、東遊などの儀が古儀のまま行われると上賀茂神社は書いています。
上賀茂神社に有料観覧席はありません。 到着を見るなら立ち見になります。席の違いは 葵祭の有料観覧席 で比べました。
2社の関係
ここが葵祭の背骨です。
下鴨神社|賀茂一族の祖神を祀る
正式名称は賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)です。賀茂一族の祖神を祀ることからこの名になったと下鴨神社は説明しています。
御祭神は2柱です。
- 賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)|西殿
- 玉依媛命(たまよりひめのみこと)|東殿
両本殿とも国宝です。
上賀茂神社|神山に降臨した賀茂別雷大神
正式名称は賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)です。
上賀茂神社は由緒をこう伝えています。神代の昔、本殿の背後・北北西に位置する秀峰「神山(こうやま)」に御降臨になったと。国宝は本殿と権殿です。
2社をつなぐのは神話
下鴨神社の説明に、2社の関係が出てきます。
玉依媛命が賀茂別雷大神を生んだと伝えられ、「賀茂別雷」の名は外祖父である賀茂建角身命に由来するとされています。
整理するとこうなります。
| 下鴨神社 | 上賀茂神社 | |
|---|---|---|
| 正式名称 | 賀茂御祖神社 | 賀茂別雷神社 |
| 御祭神 | 賀茂建角身命/玉依媛命 | 賀茂別雷大神 |
| 神話上の関係 | 母と外祖父 | 生まれた神 |
| 位置 | 鴨川の下流 | 鴨川の上流 |
| 世界遺産 | 平成6年(1994) | 平成6年 |
ただし注意点があります。下鴨神社は、2社の関係を「親子」や「兄弟」のように直接定義してはいません。 書かれているのは神話の伝えと、平安時代には皇室の氏神として「賀茂別雷神社とともに信仰を受けておりました」という一文です。
もうひとつ重なる点があります。造営の年です。下鴨神社は白鳳6年(677)に山背国司により造営されたとし、上賀茂神社は天武天皇六年(677)に山背国により賀茂神宮が造営されたとしています。同じ年を、それぞれの言い方で記しています。
前儀はどこで行われるか
5月15日の前に神事が5日あります。どちらの神社で行われるかは決まっています——1つを除いて。
| 日付 | 神事 | 場所 |
|---|---|---|
| 5月1日 | 賀茂競馬足汰式(くらべうまあしぞろえしき) | 上賀茂神社 |
| 5月3日 | 流鏑馬神事(やぶさめしんじ) | 下鴨神社 |
| 5月4日 | 斎王代禊の儀 | 両社が毎年交互 |
| 5月5日 | 賀茂競馬(13時〜/競駈は14時頃〜) | 上賀茂神社 |
| 5月5日 | 歩射神事(ぶしゃしんじ) | 下鴨神社 |
| 5月12日 | 御蔭祭(みかげまつり) | 下鴨神社 |
性格が分かれています。上賀茂は馬の神事(足汰式と賀茂競馬)、下鴨は矢の神事(流鏑馬と歩射)です。
賀茂競馬は堀河天皇の寛治7年(1093年)に始まったと上賀茂神社は書いています。御蔭祭は御蔭山から神霊を神馬に遷して迎える神事で、切芝神事と6人の舞人による東游が行われます。
5月4日の斎王代禊の儀だけが毎年交互です。2026年は下鴨神社でした。無料で見られて申し込みも不要です。2027年がどちらかはまだ発表されていません。詳しくは 葵祭の斎王代 にまとめました。
どちらで見るべきか
見る目的で変わります。
下鴨神社が向く人
2回見たい人と座りたい人です。
行列は11時40分に到着して14時20分に出発するので、同じ場所で2回通ります。有料観覧席があり、解説つきの「まなび席」(8,500円〜)も選べます。社頭の儀と走馬の儀もここです。
ただし参道は森林内で、溝や勾配があります。車いすでの観覧は困難とされています。有料席の入場締切は午前11時です。
上賀茂神社が向く人
午後から動く人と混雑を避けたい人です。
到着は15時30分なので、午前の予定がある日でも間に合います。有料観覧席がないので、席の販売や入場締切に縛られません。
神事は二の鳥居の内側で午後6時まで続きます。行列の終着点を見るという形になります。
御祭神で選ぶなら
神話の順でたどるなら、母神(玉依媛命)のいる下鴨から、生まれた神(賀茂別雷大神)のいる上賀茂へという流れになります。これは行列の進む順と同じです。
2社は鴨川の下流と上流で、歩くと距離があります。朝から夕方まで動く日になるので、宿は市内に取るのが現実的です。5月15日は曜日で動きません。
2社を1日で回るなら
行列を追いかけるのは現実的ではありません。下鴨神社の出発が14時20分、上賀茂神社の到着が15時30分で、間は約1時間。その間に加茂街道を移動する行列と同じ道を進むことになります。
現実的なのはどちらか1社で行列を見て、もう1社は別の時間に参拝する形です。
- 下鴨で見るなら、午前に下鴨(11:40着)→ 午後に上賀茂へ移動して到着(15:30)を待つか、翌日に参拝
- 上賀茂で見るなら、午前のうちに下鴨を参拝 → 午後に上賀茂で到着と社頭の儀を見る
アクセスは、下鴨神社が京阪「出町柳」駅(5番出口)または市バス4・205「下鴨神社前」、上賀茂神社が市バス4「上賀茂神社前」です。市バス4系統は両社を通ります。
注意点として、下鴨神社は当日、貸切バスと一般乗用車の駐車ができません。公共交通で動く前提です。
よくある質問
Q. 上賀茂神社と下鴨神社、どちらがおすすめですか。
A. 行列を2回見たい・座って見たいなら下鴨神社です(到着11:40と出発14:20、有料観覧席あり)。午後から動く・席を取らずに見るなら上賀茂神社です(到着15:30、有料席なし)。
Q. 2社はどういう関係ですか。
A. 下鴨神社の御祭神玉依媛命が、上賀茂神社の御祭神・賀茂別雷大神を生んだと伝えられ、賀茂建角身命はその外祖父とされています。下鴨の正式名称「賀茂御祖神社」は賀茂一族の祖神を祀ることに由来します。
Q. 下鴨神社の2027年のお祭りはいつですか。
A. 葵祭は毎年5月15日です。前儀として5月3日に流鏑馬神事、5月5日に歩射神事、5月12日に御蔭祭が下鴨神社で行われます。5月4日の斎王代禊の儀は両社が毎年交互で、2027年の会場はまだ発表されていません。
Q. 入場料はいくらですか。
A. 行列を沿道で見るだけなら無料です。有料観覧席は京都御苑と下鴨神社参道の2か所にあり、一般席が5,000円(2列目以降)/6,500円(最前列)です。上賀茂神社に有料席はありません。
Q. どこで無料で見られますか。
A. 無料観覧場所の一覧は出ていませんが、有料席があるのは2か所だけなので、賀茂川堤(加茂街道)や上賀茂神社など、それ以外の沿道は料金がかかりません。
まとめ|2社の違い
- 下鴨神社=賀茂御祖神社。御祭神は賀茂建角身命と玉依媛命。鴨川の下流
- 上賀茂神社=賀茂別雷神社。御祭神は賀茂別雷大神で神山に降臨。鴨川の上流
- 2社をつなぐのは玉依媛命が賀茂別雷大神を生んだという神話
- 行列の順番の理由は説明されていない
- 社頭の儀は両社で行われる(勅使の御祭文奏上・東遊)。下鴨はそのあと走馬の儀
- 前儀は上賀茂が馬(足汰式・賀茂競馬)、下鴨が矢(流鏑馬・歩射)と御蔭祭
- 有料観覧席は下鴨だけ。上賀茂は立ち見
- 両社とも677年に造営され、平成6年に世界文化遺産
朝の下鴨と夕方の上賀茂では、同じ日でも見えるものが違います。両方を1日で回るなら市バス4系統が両社を通ります。前後に前儀も見るなら数日の滞在になります。
→ 葵祭2027のルート|行列の通過時刻と日程・雨天順延
→ 葵祭の有料観覧席|おすすめの席と見え方
→ 葵祭の斎王代とは|選ばれ方と費用・斎王との違い
→ 葵祭とは|歴史と由来・なぜ葵祭と呼ぶのか
→ 葵祭はどこで見る?|無料で見られる場所と通過時刻
この記事の情報は2026年10月24日時点で、下鴨神社「御祭神・歴史・神話」「賀茂祭(葵祭)のご案内」、上賀茂神社「御由緒と御神紋」「賀茂祭」、京都市観光協会の葵祭ページを確認したものです。時刻は行列先頭の通過予定、料金は令和8年(2026年)の案内です。行列の順番の理由はいずれの公式にも記載がありません。2027年の日程と斎王代禊の儀の会場は、両社および京都市観光協会の発表をご確認ください。
