西馬音内(にしもない)盆踊りの踊りは2種類です。音頭とがんけ。それに、踊りは音頭と同じで囃子の主役が笛に変わるとり音頭があります。
そして、意外に知られていないことがあります。羽後町は町内外を問わず誰でも参加できる練習会を、毎月開いています。申込不要・参加料無料です。
3分で説明すると
- 踊りは音頭とがんけの2種類。ほかにとり音頭がある
- ★音頭は子どもが最初に習う振り。1番と2番を交互に踊る
- ★がんけは音頭よりテンポが速く、やや難易度が高い。踊りの最後はがんけで締める
- ★がんけ2番の横1回転は「輪廻転生」を意味するとも言われる
- 音頭には北前船で京都・大阪と結ばれた文化的影響が考えられている
- ★一般練習会は町内外関係なく誰でも参加できる。毎月第3土曜19:15受付・申込不要・無料
- 持ち物は動きやすい服装。草履や羽織を持っている人は持参
- 歌は音頭=地口(6句)、がんけ=甚句(4句)
- ★歌詞は昭和6年と昭和10年の懸賞募集で集められ、入選作の多くが今も歌われている
- ★本番の輪に観光客が入れるかどうかは、公式に記載がない
踊りは2種類ある
羽後町公式の分け方は明快です。
| 踊り | 歌 | 特徴 |
|---|---|---|
| 音頭 | 地口 | 優雅で静かな抑揚のある踊り |
| がんけ | 甚句 | 音頭よりテンポが速く、やや難易度が高い |
| とり音頭 | 地口 | 踊りは音頭と同じ。★囃子の主役が笛になる |
とり音頭は、踊り手から見れば音頭と同じ振りです。変わるのは音のほうで、24小節が1フレーズになり、音頭との移行が何度か繰り返されます。
「音頭」の特徴
羽後町は音頭を「優雅で静かな抑揚のある踊り」と説明しています。羽後町観光物産協会の表現では、手の振りや足さばきが静かで優雅、手指を大きく反らすことがアクセントです。
子どもが最初に習う振り
★音頭は1番と2番を交互に踊り、がんけより覚えやすく、子供が最初に習う振り——と羽後町は書いています。
本番でも、前半は子どもが中心です。つまり夜の早い時間に見ている踊りは、音頭が多いということになります。
上方の影響という説
興味深い説明が付いています。★江戸時代に北前船で京都・大阪と結ばれていたため、その文化的影響が考えられている——というものです。
秋田の山あいの町の盆踊りが「上方風」と言われるのは、この経路があったからだという見方です。羽後町観光物産協会も、この祭の特徴を「野性的な囃子と、優雅で流れるような上方風の踊りの対照」と書いています。
「がんけ」の特徴
がんけは音頭よりテンポが速く、回転する動きが入ります。難易度も上です。
名前の由来は定まっていません。羽後町が挙げているのは「雁形」「勧化」「願生化生」の3つの説です。
2番の1回転は「輪廻転生」
★「がんけ」2番の、輪を描くように横に1回転する動きは「輪廻転生」を意味するとも言われ、亡者踊りと称される所以とされている——と羽後町は書いています。
この祭には、慶長6年(1601)に滅んだ西馬音内城主・小野寺一族を偲び、土着した臣下が宝泉寺で行った亡者踊りが合流したという言い伝えがあります。その痕跡が、がんけの振りに残っているという説明です。背景は なぜ怖いと言われるのか にまとめました。
最後はがんけで締める
★踊りの最後はがんけで締められます。がんけで唄われる甚句は、「亡者踊り」の側面から歌詞や節回しに哀調が漂うとされています。
そして囃子全体は寄せ太鼓に始まり、寄せ太鼓で終わります。夜が深まるほど、がんけの比重が上がっていく構成です。
手の動きがいちばん難しい
公式が難易度の順位を書いているわけではありませんが、説明の重心は手にあります。
- 音頭|手指を大きく反らすことがアクセント(羽後町観光物産協会)
- 音頭|手の振りや足さばきが静かで優雅
- がんけ|回転する動きが入る
足は静かで、回転も1回。見分けがつくのは手の形です。顔は編笠や彦三頭巾で隠れているので、踊り手の巧拙は手と姿勢に出ます。
国立国会図書館のレファレンス事例に「西馬音内盆踊りの踊り方を習得できるような資料はないか」という質問が残っているほど、この手の動きを文字で伝えるのは難しい部分です。映像で見るのが早いので、西馬音内盆踊り会館 の200インチの紹介動画が役に立ちます。会館は全館無料です。
観光客が輪に入って踊れるのか
ここが、いちばん答えの出しにくい点です。
★本番の踊りの輪に観光客が入れるかどうかについて、羽後町にも羽後町観光物産協会にも記載がありません。
分かっているのは次の3点です。
- 会場の本町通りは16:00〜23:30が交通規制になり、実行委員会が設置する仕切台と椅子以外は使えない
- 端縫いは踊りが上手と認められて初めて着られる格式の高い衣装(女性専用)
- ★羽後町は、町内外を問わず誰でも参加できる練習会を別に用意している
つまり「踊りたいなら練習会へ」という道が公式に用意されているのが実態です。本番の輪については、現地で主催者に確かめることになります。
踊りを習う方法
羽後町が開いている練習会は2種類あり、一般練習会のほうは誰でも参加できます。
| 項目 | 一般練習会 | 町民練習会 |
|---|---|---|
| 対象 | ★町内外関係なく、どなたでも | 町内に住む人。少人数制 |
| 開催 | 毎月第3土曜日(8月は第2土・日曜日) | 毎月第2火曜日 |
| 会場 | 4〜12月はコミュニティーセンター/2・3月は西馬音内盆踊り会館 | 西馬音内盆踊り会館 |
| お囃子 | ★練習に参加できる | 行わない |
当日の流れ
一般練習会の時間割は公表されています。
- 19:15|受付開始
- 19:30|グループ練習
- 20:15|お囃子に合わせた全体練習
- 21:00|終了
★事前申し込み不要・参加料無料です。練習日は都合により変更になる場合があるとされています。問い合わせ先は西馬音内盆踊保存会 事務局です。
持ち物は動きやすい服装と草履
案内にある持ち物は「動きやすい服装。草履や羽織をお持ちの方は持参」です。
草履は必須ではありませんが、足さばきが静かな踊りなので、履物で感覚が変わります。踊り用の草履は、スポンジ底で練習向きのものがあります。
2・3月なら会場が西馬音内盆踊り会館です。祭の会場そのもので習える時期ということになります。
衣装で踊りが変わるか
衣装は端縫いと藍染めの2つです。
| 衣装 | 内容 |
|---|---|
| 端縫い(はぬい) | 4〜5種類の絹布を左右対称にパッチワーク状に縫い合わせた女性専用の着物。「接ぎ衣装」とも |
| 藍染め | 男女兼用。多くは秋田県南部の伝統的な染技法を用い、手絞りで作る |
羽後町の説明に、踊りそのものが衣装で変わるという記述はありません。変わるのはかぶり物の組み合わせです。★彦三頭巾をするときは藍染を着用します。編笠は端縫い・藍染めのどちらにも合わせられます。
端縫いは上手と認められてから
★端縫いは、踊りが上手になったと家族や周囲に認められて初めて着ることが許される、格式の高い衣装とされています。さらに旧家など裕福な家柄の人だけが作ることができたとも書かれています。
顔は隠れていても、衣装で踊りの格が分かる。踊りの上達と衣装が直接つながっているのが、この祭の構造です。
囃子と歌
囃子は櫓の上で演奏されます。本番では西馬音内盆踊り会館2階の露台にせり出して作られた櫓で、浴衣に肩衣(太鼓打ちはたすき掛け)、鉢巻姿です。
楽器は笛・三味線・大太鼓・小太鼓・鼓・鉦。笛と三味線は複数人、ほかは1名ずつで、これに地口・甚句の歌い手が加わります。
音頭で唄われる「地口」は6句
★地口は6句からなり、節回しは「8、8、9、8、8、9」です。羽後町は秋田音頭と違い、前口上にあたる部分がないと書いています。
内容は即興的なものから、農村的な情緒、ユーモア、世相や権力層への風刺まで多彩。農民特有の素朴な色気を感じさせるものもあるとされています。陰気な歌ではありません。
囃子の構成も公表されています。音頭は最初の2小節で囃子方が声を合わせて導入し、3小節目から踊りに入り、6小節のフレーズが繰り返されるという形です。
がんけで唄われる「甚句」は4句
★甚句は4句で、「7、7、7、5」です。がんけは緩やかな調子で甚句が唄われ、終盤にテンポに大きな緩急がつけられます。
歌詞は懸賞募集で集められた
知られていない経緯があります。
- ★昭和6年|地元の酒造会社「若返り」が地口の歌詞を懸賞募集した。甚句も同年に募集。地口の一等は矢野泰助氏で、甚句でも1位
- ★昭和10年|羽後銀行西馬音内支店が懸賞募集(地口と甚句の両方)。入選作の多くは現在も歌われている
つまり今うたわれている歌詞のかなりの部分は、昭和初期に公募で集められたものです。全歌詞は羽後町公式サイトの「音頭(地口)の歌詞」「がんけ(甚句)の歌詞」の各ページに掲載されています。
東京など他地域で踊れる場所
★町外で踊りを習える場があるかどうかについて、羽後町と羽後町観光物産協会のページに記載はありません。
関連する事実としては2つあります。
- 昭和10年(1935)に東京の第9回全国郷土舞踊民謡大会へ県の推薦で出場し、これを機に形式が整えられた
- 昭和22年に結成された西馬音内盆踊保存会が、伝統の保存・伝承、後進の育成、全国での公演活動を続けている
全国での公演活動はあるということです。確実に踊れるのは羽後町の一般練習会で、こちらは申込不要・無料です。
よくある質問
盆踊りを上手く踊るコツは何ですか
西馬音内盆踊りに限れば、手です。音頭は手指を大きく反らすことがアクセントとされ、足さばきは静かです。顔が編笠や彦三頭巾で隠れるぶん、巧拙は手の形と姿勢に出ます。まずは音頭(1番と2番を交互)から覚えるのが公式の順序で、子どもが最初に習う振りです。
服装は
練習会の案内にあるのは「動きやすい服装。草履や羽織をお持ちの方は持参」だけです。本番の衣装は端縫い(女性専用)と藍染め(男女兼用)で、端縫いは踊りが上手と認められて初めて着られます。彦三頭巾をするときは藍染めを着ます。
東京で踊れますか
町外の練習の場について、羽後町と観光物産協会のページに記載はありません。保存会が全国での公演活動を続けているとは書かれています。確実なのは羽後町の一般練習会で、町内外を問わず参加でき、申込不要・無料です。
盆踊りを簡単に踊る方法は
順序は決まっています。音頭から入ること。公式が「がんけより覚えやすく、子供が最初に習う振り」としているのが音頭です。がんけはテンポが速く、回転が入り、難易度が高いとされています。練習会は19:30のグループ練習 → 20:15のお囃子に合わせた全体練習という段取りなので、この流れに乗るのが近道です。
観光客も輪に入って踊れますか
★本番の輪に入れるかどうかについて、公式に記載がありません。会場の本町通りは16:00〜23:30が交通規制で、実行委員会が設置する仕切台と椅子以外は使えない決まりです。一方で町内外を問わず参加できる練習会が毎月開かれています。
まとめ|踊り方と歌詞の要点
- 踊りは音頭・がんけ・とり音頭。とり音頭は振りが音頭と同じで囃子の主役が笛になる
- ★音頭は子どもが最初に習う振り。1番と2番を交互に踊る
- 音頭には北前船による上方の影響が考えられている
- ★がんけはテンポが速く回転が入る。踊りの最後を締める
- ★がんけ2番の横1回転は「輪廻転生」を意味するとも言われる
- 見分けがつくのは手の形。音頭は手指を大きく反らすのがアクセント
- ★一般練習会は町内外問わず誰でも参加できる。毎月第3土曜19:15受付〜21:00、申込不要・無料
- 持ち物は動きやすい服装。草履や羽織は持っていれば持参
- ★端縫いは上手と認められて初めて着られる(女性専用)。彦三頭巾のときは藍染め
- 歌は地口6句(8-8-9-8-8-9)と甚句4句(7-7-7-5)
- ★歌詞は昭和6年と昭和10年の懸賞募集で集められた
- ★本番の輪に観光客が入れるかは公式に記載がない
練習会の案内にある「草履」は、スポンジ底の踊り用のものが扱いやすい種類です。舞台・習い事・盆踊り向けに作られたものが手に入ります。
この記事の情報は2026年10月26日時点のものです。羽後町公式の「西馬音内盆踊りの文化・歴史」「西馬音内盆踊りの歌詞」「西馬音内盆踊り練習会」「西馬音内盆踊り会館」と、羽後町観光物産協会の「西馬音内盆踊り」(概要)「【令和8年】西馬音内盆踊り開催情報」を確認しました。歌詞そのものは羽後町公式サイトの各ページに掲載されているため、この記事では形式と経緯のみを書いています。本番の踊りの輪に観光客が入れるかどうか、町外で踊りを習える場については、いずれのページにも記載がありませんでした。
